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2 エットコダンゴ

お話を聞く

 

 むかしむかしのことです。ひと組の若い夫婦が暮らしていました。

 ある日のこと。嫁さんの 実家<じっか>から、「久しぶりに2人の顔が見たい」と招待<しょうたい>されました。あいにく嫁さんは急用で、婿< むこ>さん一人で出掛<でか>けることになりました。

 嫁さんの家に行くと、たくさんのご 馳走<ちそう>が用意されていました。中でもアンコでくるんだダンゴはとりわけ珍<めずら>しく、何度も何度もおかわりをするほどでした。あまりの美味<おい>しさに、婿さんは母親に尋<たず>ねました。

 「おらぁ、こんなウメエもんは初めてです。何という食べもんですか」
 「これはダンゴといって、娘の大好物だべ。後で作ってもらうとよかんべ」

 そこで帰り道、名前を忘れないように「ダンゴ、ダンゴ…」といいながら歩くことにしました。

 途中まで来ると 堀切<ほっきり>(水抜<みずぬ>きのために道に掘<ほ>った堀<ほり>)があったので「エットコショ!」ととび越<こ>えました。そのとたん、今までいい続けてきたダンゴを忘れ、「エットコ、エットコ…」と歩き出しました。

 

 家に着くなり、婿さんは実家でのことを話しはじめました。

 「今日はエットコというウメエもんをご馳走になった。いつでもいいから、あのエットコを作ってくれ」
 「私の実家ではエットコというもんは作ったことはないですよ。何かの 間違<まちが>いでは…」

と、聞き返しました。

 「いや、エットコだ!」
 「知らないものは出来ません!」
 「おらぁ忘れねぇように、言いながら帰ってきたんだど!」

 

 とうとう喧嘩< けんか>になってしまいました。 きっと作るのが面倒<めんどう>で、知らないふりをしているんだろうと思った婿さんは、そばにあったキセルで嫁さんの頭を思いっきり叩<たた>きました。あまりの痛さに手をやると、大きなこぶが出来ました。

 「あんた、ぶったわね。ダンゴのようなこぶができたじゃない!」

婿さんはすかさず膝<ひざ>を叩<たた>き、

 「おおっ、そのダンゴだ」