36 大沼<おおぬま>の白馬<はくば>

お話を聞く

 

 種足<たなだれ>小学校前の県道を南に折れ、東印寺<とういんじ>へ向かう道際<みちぎわ>に馬頭観音<ばとうかんのん>があります。

 むかしは、このあたりに大きな沼があり「大沼」と呼ばれていました。

 

 平安時代も終わりの頃(約850年前)…

 源義家<みなもとのよしいえ>が陸奥<むつ>(東北地方の古い呼び名)での戦<いくさ>をしずめるため北へ向かっていました。その集団の中で、渡辺という武士が乗る白馬は、まことに美しく絵を見るような姿でした。

 ところが、種足まで来たとき、白馬は急な病気になってしまいました。しかたなく渡辺と2人の弟は集団を離れ、白馬の看病<かんびょう>をしましたが、手当の甲斐<かい>もなく、白馬は亡<な>くなってしまいました。3人は近くにあった大沼に馬を埋葬<まいそう>し、心をこめて弔<とむら>いました。集団から遠く離れてしまったので追いつくこともできず、兄弟は仕方なく、この土地に住むことにしました。

 

 大沼もいつしか埋まり、畑となっていました。明治時代、そこへ家を建てようと、井戸を掘<ほ>った時のことです。コツコツと、何かに当たる音が聞こえました。不思議に思い掘ってみると、なんと馬の骨が出てきました。

 そこへ駆け付けた村人が、「これこそ我が祖先<そせん>が乗っていた白馬に違いない!」と言って、馬頭観音を建てたということです。