41 背高地蔵<せったかじぞう>

お話を聞く

 

 下崎の道南<みちみなみ>耕地<ごうち>には、田んぼを向いて大きなお地蔵様が立っています。高さ2、5メートル。背が高いことから、〝背高地蔵〟と言われています。この辺りの家を尋<たず>ねるには「背高地蔵のどちら側?」と聞いたほうが早いくらいで、村のシンボルにもなっています。

 

 ところでこのお地蔵様、実は洪水<こうずい>で亡<な>くなった人の供養<くよう>に立てられました。

 

 むかしむかしのことです。来る日も来る日も雨ばかり。川の水かさは増し、あちこちの堤防<ていぼう>が切れ、大水が押し寄せて来ました。家は大水に飲みこまれ、人や馬は流され、辺り一面はまるで海のような景色になりました。このような地獄<じごく>のようなありさまに、村人もどこかへ行ってしまいました。

 

 それから何年かが経<た>ち、ひとりふたりと村人も戻ってきました。田や畑も、元の景色に戻ってきた頃です。洪水で亡くなった人の供養にとお地蔵さまを立てることになりました。そこで「どんな大水にあっても潜<もぐ>らないお地蔵さまにしたい」と、背の高いお地蔵様が享保<きょうほう>3年(1718)に造られたということです。(市指定文化財)